滋賀県工業技術総合センター 令和5年度(2023年度)業務報告
2. 技術相談支援
令和5年度実績の概要は、次のとおりです。
事業名 |
実施件数等 |
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---|---|---|---|
栗東 |
信楽 |
合計 |
|
職員による技術相談 |
3,791件 |
859件 |
4,650件 |
リサーチサポート制度の利用 |
1件 |
3件 |
4件 |
モノづくり技術人材育成事業 |
18コース |
2コース |
20コース |
海外展開技術支援事業 |
4件 |
0件 |
4件 |
(1) リサーチサポート制度の利用
県内企業や当センター等の実施する技術開発や研究会事業に大学等の専門家をリサーチサポーターとして招聘し、適切な指導助言を得て課題解決を図ることで技術開発や研究会事業等を円滑にすすめる事業です。
[栗東]件数:1件
月日 |
分野 |
内容 |
---|---|---|
R6.2.1 |
食品 |
試験醸造酒の評価および指導 |
[信楽]件数:3件
月日 |
分野 |
内容 |
---|---|---|
R5.5.23 |
窯業 (デザイン) |
「新しい生活様式のための陶製品開発」に関するデザイン指導 |
R5.9.7 |
「新しい生活様式のための陶製品開発」に関するデザイン指導 |
|
R5.12.11 |
「新しい生活様式のための陶製品開発」に関するデザイン指導 |
(2) モノづくり技術力向上のための「技術研修」事業(講習・実習)
件数:20コース、参加者:317名
庁舎 |
講習会名称 |
年月日 |
内容 |
参加者 |
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栗東 |
講習【何ができる?3Dスキャナ -製品形状評価の3Dデジタル化-】 実習【3Dスキャナを用いた測定】 |
R5.7.14 |
3Dスキャナによる製品評価と測定事例に関する講習と実習 |
16名 |
講習【DED方式金属3Dプリンタの活用と金属AMメーカーの戦略】 |
R5.9.20 |
DED方式金属積層造形機に関する講習、実機を用いたデモ造形 |
77名 |
|
講習【XPSによる表面分析の原理と実践のコツ】 |
R5.11.2 |
X線光電子分光法における基礎的な原理や測定例、注意点などに関する講習と実習 |
16名 |
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講習【フィルムや薄膜の物性評価】 |
R5.11.16 |
微小硬度計の試験概要や測定例の紹介 |
7名 |
|
講習【技術者のための実学的耐候性評価】 |
R5.12.14 |
耐候性評価や実験方法に関する講習と実習 |
34名 |
|
講習【振動試験における取付治具作製のポイント】 |
R6.2.6 |
振動試験の取付治具作成や事例に関する講習と実習 |
7名 |
|
講習【マイクロフォーカスX線透視装置構造と取扱方法】 |
R6.3.6 |
マイクロフォーカスX線透視装置の原理や技術に関する講習と非破壊観察の実習 |
4名 |
|
講習【EMI測定技術講習会】 実習【最新型EMIレシーバの実演と機能紹介】 |
R6.3.8 |
放射・伝導エミッション測定についての講習とEMIレシーバーによる実演 |
28名 |
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栗東小計 |
18コース |
286名 |
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信楽 |
講習【サーモグラフィの基礎と活用について】 |
R5.8.30 |
サーモグラフィによる温度測定法に関する講習と実習 |
12名 |
講習【ペレット式3Dプリンタの基礎について】 |
R6.2.9 |
ペレット式3Dプリンタによる造形の基礎に関する講習と実演 |
4名 |
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信楽小計 |
2コース |
31名 |
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合計 |
20コース |
317名 |
(3)海外展開技術支援事業
件数:4件
企業の皆さまが自社製品を海外に輸出するとき、製品の安全性や品質を輸出対象国の定める規格へ適合させる必要があります。しかしながら、規格の種類や試験項目は多岐にわたることから、自身で情報を収集して規格適合のための試験を実施することは難しい状況です。そこで、
- 販売先はどんな規格なのか。
- どうやって製品を評価するのか。
- どこで評価するのか。
- どんな手続きがあるのか。
といった疑問を解決するため、製品輸出を検討される企業に対して個別相談会による支援を実施しました。
登録相談員:5名
相談員 |
技術分野 |
---|---|
吉川保氏 |
CEマーキング、機械指令 |
佐々木宏氏 |
国際規格適合設計(白物家電)、IEC国際規格対応、製品安全試験所の品質マニュアル |
古谷武徳氏 |
RoHS指令、REACH規則 |
川北日出夫氏 |
RoHS指令、REACH規則、CEマーキング |
今井俊和氏 |
RoHS指令、REACH規則、グリーン調達 |
(4)技術移転
件数:41件
以下の条件を満たす技術相談支援を技術移転の件数としています。
- 技術相談や設備使用のため、新たな調査、試験、実験、試作のいずれかを行っていること。
- 企業の技術力向上に対する貢献度が、研究推進指針でいう研究成果の技術移転と同等と考えられること。
- 企業から「技術移転申請書(調査・試験)」(案)の提出があること。
(5)主な技術相談事例
無線LANモジュールの通信品質評価について
- 分野
- 電子
- 課題
- 機器に組み込んだ無線LANモジュールのつながりやすさを評価したい
- 対応
- 多くの組み込み用無線LANモジュールは、モジュール基板上にアンテナが実装されている場合が多い。このようなモジュールを機器に組み込んで使用する場合、機器の筐体の材質や形状の影響でつながりやすさ(通信品質)が劣化することがある。この主な原因は、機器の筐体によって無線LANの電波強度が減衰するためである。 機器の筐体が無線LANのつながり易さへ与える影響の一つの指標として「パケットエラーレート(PER)測定」というものがある。これは、無線LAN用の無線機テスタから無線LANモジュールに対して送信したパケットの数と無線LANモジュールが受け取れたパケットの数を比較するものである(送信パケット数が1000個、受信パケット数が900個の場合、PERは10%となる)。筐体の材質や形状を変えてPER測定を実施することで、どのような筐体であればより良い通信品質を確保できるのかを定量的に把握することが可能となる。
輸送環境を想定したアルミフレームに対する振動試験について
- 分野
- 電子
- 課題
- アルミフレームの輸送振動試験を実施したい
- 対応
- トラックで輸送する際に生じる振動に輸送対象であるアルミフレームが長時間さらされた場合を想定した振動試験を実施したいという相談があった。まず、振動試験には周波数一定の振動を与えるスポット試験、周波数を掃引しながら振動を与える掃引試験、想定された環境に対応するランダムな振動を与えるランダム振動試験の3種類があることを説明した。次に、輸送環境を考慮したJIS規格を紹介し、対象に与える振動の決定と試験計画を立てるサポートを行った。最後に、輸送時のアルミフレームの固定方法を考慮した試験機への固定の仕方を提案した。
金属3Dプリンタによる非鉄金属材料の造形
- 分野
- 機械・計測
- 課題
- 難積層造形材であるアルミ合金や銅合金の造形条件検討について
- 対応
- センター既設の粉末DED方式金属3Dプリンタにおいて、アルミ合金、チタン合金や銅合金など非鉄金属材料の積層造形に関する相談が増加傾向にある。これらの中には、レーザーの吸収率が鉄鋼材料と大きく異なるため、造形が困難な材料も存在するが、相談企業と共に造形条件の検討や評価を重ね進めている。 造形条件は目的の形状やターゲットの基板の材種によっても異なり、ビード(ライン)や小型ブロック形状の造形とその評価を重ね、造形条件を絞り込み、目的形状の造形を行っている。 相談企業は、これら非鉄金属材料の積層造形に関する造形および評価技術に関する新たな知見をもとに、例えば構造用部品や冷却効率向上を目的としたバイメタル金型への応用など、新たな製造プロセスとして金属積層造形の検討を行うことができた。
3Dスキャナー測定について
- 分野
- 機械・計測
- 課題
- 金属部品の形状を設計CADデータと比較し差異を検証したい
- 対応
- 弊所所有の3Dスキャナーは、青色フリンジパターンを2台のカメラで読み取ることで形状を読み取っている。金属製の試験体は光沢面を持つため濃淡の判定が困難となるため、表面へ白色スプレーを塗布し測定を行った。その測定データを使用し、CADデータとの形状フィッティング、形状差異の解析および幾何形状測定の方法について指導を行った。
ゴムに含まれる異物の分析について
- 分野
- 有機材料
- 課題
- ゴムシート製造時に見つかった粒状異物が何かを調べたい
- 対応
- ゴムシートの製造工程において、断続的に数百ミクロン程度の大きさの粉粒体がシート内に発生した。光学顕微鏡を用いて当該異物を採取し、顕微FT-IRを用いて同定を行ったところ、原料で使用される架橋剤であることが分かった。この結果を踏まえ、原料の投入方法や製造条件を改めて見直すことで、工程改善を図っていくこととなった。
共重合したポリマーの分子量について
- 分野
- 有機材料
- 課題
- 共重合したポリマーの物性のばらつき原因を分子量分析で明らかにしたい
- 対応
- 共重合したポリマーの合成工程において、得られた生成物の物性にばらつきが生じていることが判明した。相対分子量法で評価したが、分子量に大きな違いがなく、ばらつきの原因が特定できなかった。そこで、マルチ検出器GPCシステムを用いてフォトダイオードアレイ検出器と示差屈折率検出器の結果を比較したところ、クロマトグラムの形状に差異があることが分かった。この差異は、共重合体の組成が分子量ごとに変動していることを示唆している。上記を受けて、反応条件の検討を行うこととなった。
金属部材表面の異常部の分析
- 分野
- 無機材料
- 課題
- 複数のプロセスを経た金属部材の表面に変色異常が発生しており、異常発生の原因を調べたい
- 対応
- 変色が何によって生じているかの目途を付けるために、光学顕微鏡で観察を行った。腐食等による凹凸構造は見られず、組成的な変化もしくは何らかの残渣であることが予想された。そこで、電子顕微鏡を用いて異常部の元素分析を行った結果、各プロセスで使用される材料の分析もあわせて行うことで、特定のプロセスで使用した材料の残渣が影響している可能性があることがわかった。
製品の端子部分における変色部の分析について
- 分野
- 無機材料
- 課題
- リチウムイオン二次電池用に用いられる部材の評価を行いたい
- 対応
- 製品の端子部分に変色が見られ不具合が生じていることから、変色の原因を特定する分析手法について相談を受けた。変色部の面積が微小であり、表層の変色の可能性があったため、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光分析法)により、端子の微小部分に対して分析を行った。分析前は酸化物の可能性があったが、分析結果から硫黄が検出されたため硫化物の可能性も示唆された。
アルミニウム材料の分析について
- 分野
- 無機材料
- 課題
- アルミトレーを焼付塗装したところ、試作段階では問題なかったのに対し、量産段階で変形しやすくなったため、材料が同じものか確認したい
- 対応
- アルミトレーにはアルミニウムを99.5%以上含有するA1050を使用するように指定されていた。アルミニウム材料には2000番台など他の番手もあるが、それらの材料はアルミニウム以外の元素が数%含有しているので、トレーに使用している材料がアルミニウムの他に元素が含まれていないか、迅速測定が可能なエネルギー分散型蛍光X線を用いて材料の分析を行った。試作段階と量産段階のそれぞれのトレーについて分析を行ったところ、量産段階の材料はA1050だったのに対し、試作段階の材料はA3003を使用していたことがわかり、試作の時点で材料変更されていることが量産段階に反映されていないことが判明した。
清酒製造に用いる米麹について
- 分野
- 食品
- 課題
- 製造した米麹の品質を把握したい
- 対応
- 清酒醸造に使用する米麴の品質は出来上がる酒の品質に大きく寄与している。狙った品質の麹を安定して造ることは最終製品である清酒の品質の安定・向上につながるため、出来上がった米麹の品質を把握することは大切である。 数値的に米麹の品質を把握するため、代表的な分解酵素であるαアミラーゼ、グルコアミラーゼ、酸性カルボキシペプチダーゼの酵素力価を酵素法により測定した。また、麹の汚染の度合いの指標である細菌酸度の確認を行い分析結果について説明を行った。
セラミックトナー印刷システムによる複雑な絵柄の陶器の製造方法について
- 分野
- 陶磁器デザイン
- 課題
- 信楽焼の食器に、非常に複雑で細かな絵柄を付けた製品を開発したい
- 対応
- 信楽焼の食器に、複雑で細かな絵柄を付けるため試験場に導入しているセラミックトナー印刷システムを利用し、無機顔料をレーザープリンタで印刷することを提案した。本来、このシステムでの転写紙の作成には、低温で融ける低火度釉でカバーコートすることで焼き付けをおこなうが、低火度釉が、艶消しの表面質感を損なってしまうため、新たに樹脂のカバーコートを用い、高温で下地の釉薬を融かし焼き付ける工夫を行うことで、目的の質感の絵柄を製品化することができた。
球状セラミック製品の製造方法の改善について
- 分野
- 陶磁器デザイン
- 課題
- 直径数ミリの球状のセラミック製品を製造する際に、球形造粒機でうまく球体を作ことができない現象を改善したい
- 対応
- 通常の粘土で直径数ミリの球状の粒を製造するには、次の2段階の球状造粒を行う。まず、1段階目で、顆粒製造機で小さな顆粒状にしてから、2段階目で球形造粒機にかけて球状成形をおこなう。しかし、アルミナなどの主材にバインダーを加えて可塑性を出した原料の場合、うまく顆粒にならず細い麵状になって出てきてしまう。解決方法として、主材の粉体を球形造粒機に直接投入し、水で希釈したバインダーを霧吹きで吹きかけることで徐々に球形を成型できることを見出した。また吹き付けるバインダーの量で球形の大きさをある程度調整でき、製品の製造に道筋をつけることができた。
顆粒試料の粒子径分布について
- 分野
- セラミック材料
- 課題
- 造粒された水溶性の顆粒試料の粒子径分布を測定したい
- 対応
- 既設のレーザー回折式粒子径分布測定装置では、水分散による湿式測定以外に乾式測定が可能であるため、試験機器利用で対応した。また、試料の保存環境の乾燥状態により測定値に影響を与えるため、品質管理などの目的に応じた試料準備により、違いを把握することができた。さらに、本装置では同時に画像撮影による解析測定ができ形状把握や凝集状態の参考になる。
コンタミの調査について
- 分野
- セラミック材料
- 課題
- Feが含まれるかを調べたいがサンプル量が少ない
- 対応
- 樹脂中にさび(Fe)が含まれているかを調査したい。サンプル量が少量であったが、EDX(エネルギー分散型蛍光X線装置)にて分析範囲を絞り、サンプルを測定した結果、Feが検出された。少量サンプルしかない場合は、SEM-EDSやICPなども候補に上がるが、本件ではEDXにて非破壊でサンプルの加工無く、迅速に測定ができた。