滋賀県工業技術総合センター 令和5年度(2023年度)業務報告
(4)重点研究の評価委員会
当センターおよび東北部工業技術センターでは、商工観光労働部試験研究機関研究推進指針(平成11年3月制定)に基づき、重点研究の内容についての部内評価委員会、外部評価会議を開催し、新規の研究企画および終了した研究内容に対するアドバイスをいただいています。
1.部内評価委員会
研究企画
バイオマスプラスチックの信頼性と物性向上に関する研究
大山雅寿、中島啓嗣、中居直浩、井上由香、○脇坂博之
未来世代への統制品研究開発
○高畑宏亮、山内美香、西尾俊哉、桐生恵叶
研究終了
金属3Dプリンタを用いた積層造形技術の高度化に関する研究
斧督人、柳沢健太、今田琢巳、○藤井利徳
月日 |
令和5年8月1日(火)滋賀県大津合同庁舎6-A議室 |
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委員 |
中村達也 商工観光労働部・次長 那須喜一 商工観光労働部・技監 濱川克彦 商工政策課・課長 森野実知子 モノづくり振興課・課長 佐々木宗生 モノづくり振興課・参事 中島孝 工業技術総合センター信楽窯業技術試験場・場長 今道高志 東北部工業技術センター・所長 山下誠児 東北部工業技術センター・参事 |
2.外部評価会議
研究企画
バイオマスプラスチックの信頼性と物性向上に関する研究
大山雅寿、中島啓嗣、中居直浩、井上由香、○脇坂博之
未来世代への統制品研究開発
○高畑宏亮、山内美香、西尾俊哉、桐生恵叶
研究終了
金属3Dプリンタを用いた積層造形技術の高度化に関する研究
斧督人、柳沢健太、今田琢巳、○藤井利徳
月日 |
令和5年11月9日(木)滋賀県庁 本館4-A会議室 |
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委員 |
山根浩二 滋賀県立大学工学部教授(機械) 和田隆博 龍谷大学先端理工学部教授(無機化学) 李周浩 立命館大学情報理工学部教授(ロボット工学) 石川泰史 成安造形大学空間デザイン領域教授(デザイン) 中村徳幸 国立研究開発法人産業技術総合研究所 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ招聘研究員 仙波直一 株式会社オーケーエム商品開発部長執行役員 森内幸司 株式会社アイ.エス.ティ研究開発部主幹部員 小川栄司 公益財団法人滋賀県産業支援プラザ常務理事 |
外部評価会議で出された指導改善事項、総評について以下に示します。
バイオマスプラスチックの信頼性と物性向上に関する研究(研究企画)
- 指導改善事項
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- 石油系樹脂に比べて同等の品質や生産性、コストに近づけるのは長い道のりが予想されるが、法的な規制や企業コンプライアンスへの取り組みがある程度はずみになることを考えれば、研究の妥当性は高い。
- 成果目標として県内プラスチック関連事業者への技術提供を30件以上とされているが、どのような技術課題があり研究テーマの成果がどの様に企業側のニーズに合致したか明確にしていただけるとより納得性がますと思います。AIライブラリ利用後の独自性と、どこに挑戦するのかがまだ不明確なような気がしました。
- 総評
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- 本プロジェクトの推進はほぼ妥当と評価できる。この分野の研究開発は非常に活発なので、国内外の研究開発の状況をウォッチングしながら進めることが重要。
- ぜひ進めるべき課題であり、今後の成果および展開を期待したい。
- バイオプラスチックに関連する研究は、CO2削減などの観点から広く発展するものと思われる。知財を取得し地域の企業へ展開することは、公設センターの主たる役割でもあり、引き続き尽力してほしい
- バイオプラスチックは材料メーカなどでもいろいろと研究開発されている材料になるかと思います。今回の研究開発でどのような独自性のある素材を目指すのか方向性が示せればよかった。自動車などの過酷な条件でなければ、何に使用する素材開発?
- 現時点では民間企業で取り組みにくいテーマであり工業技術総合センターで取り組まれる良いテーマと思います。ナノセルロース繊維に関する長年の知見に加え、複合材料の分析、とくに温度時間換算則によるライフ予測知見をお持ちであり、成果期待しております。
- バイオマス複合材料については、企業ニーズを踏まえた目指すべきゴールがもう少し具体的になると良いかと思います。
- バイオプラスチックの普及に向けて、県内企業に提供できる基礎データをしっかり固めていただきたいと思います。
未来世代への陶製品開発研究(研究企画)
- 指導改善事項
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- 全体的な研究テーマの組み立てがブランディング目線のコンセプトであることで、3つの目標の一貫性には欠けるところがあるが、事業として上手く歯車がかみ合うことを目指してほしい。
- 大型製品が得意な信楽の面目にかけて型製作のデジタル化はよい試みだと思う。デジタル化がもたらすメリットの活用(例えば3Dスキャン→大型化や国際コンペでデザイン募集など)に発展する展望が見える。
- 玩具については、上記に比して方向性が抽象的である印象を得た
- 迅速焼成については、ワークショップ時間内で焼成状況まで体験できたり、これまでにない事業運用の可能性を感じた。
- 遊具・玩具のニーズは?
- 迅速焼成の産業面への効果は?
- 総評
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- チャレンジングであるが、非常に意欲的な取組である。技術移転と継続性が重要であると思う。
- 滋賀県独自の取り組みとして、ぜひ進めるべき課題であり、成果を期待したい。
- 目標が明確であり、遊具や玩具に着目して窯業製品とリンクしている点、また、陶芸体験の迅速化など、これまでの発想には無いチャレンジな試みに印象付けられました。地域との連携もすでに取れているので、題目にある「未来世代」への展開へ期待します。
- 焼成時間の短縮は、環境対応などの面でも有効と考えるので、委員会の中でも話が出た通り産業界への展開なども視野に入れた研究開発の推進をお願いします。
- 良い意味でチャレンジングなテーマであると感じました。とくに迅速1日焼成は素人が拝聴いたしてチャレンジングで、民間企業が強く期待されているものと想像します。
- 陶芸体験について、陶器の配送まで時間が少し長く、娘のワクワク度がロクロ体験時よりも確かに下がっておりました。しかしロクロ体験により「早く届かないかなぁ」と、ワクワク感はかなり維持されておりました。何もかもすぐ手に入ると思っている子供たちに、モノづくりの丁寧さを伝えるためにも、配送費等はかかりますが、陶芸体験全体のコトとして、必ずしも当日に陶器が上がってくる必要はないように感じました。また迅速1日焼成に向けたマイルストーンにもなるかと感じました。成果期待しております。
- 迅速焼成技術の確立は観光・陶芸体験を含め信楽焼産地に新たな展開をもたらすものと思われますので、期待しています。
金属3Dプリンタを用いた積層造形技術の高度化に関する研究(研究終了)
- 指導改善事項
- なし
- 総評
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- 今後の発展に期待している。継続性が重要。
- おおむね計画通りに進められたと思うが、今後の発展性について具体的な道筋が明確ではない。
- 今回の研究で得られた技術・知見が実際の製品に採用されているところが素晴らしい。金属は熱処理によって物性や加工の手順・可能性が大きく変化するため、職人レベルの経験値にならぶためには多くの時間と労力が必要だと感じた。
- 個々の研究目標の達成状況は満足できるものであり、ある程度の独自性も示せている。今後の検討にも示されているが、金属3Dプリンタを効果的に活用できる製品や用途について、鍵となるので引き続き尽力してほしい。
- 金属3Dプリンタに関しては、早い段階より設備導入され要素技術の研究開発を進められたことでノウハウの蓄積など先進的な取組みを実施いただいた。今後の導入期より普及期に移行していく段階では、今回の成果を各分野が活かせる様に研究会で技術提供を継続願います。
- 金属3Dプリンタの得手、不得手を把捉され大変な苦労があったと想像します。今後はやはり得手を伸ばしていかれるのでしょうか。種々の成果を金属3Dプリンタにフィードバックされ、今後の発展を期待しております。
- センターにとって初めてとなる金属3Dプリンタについて、DED方式の特徴性の把握から特徴を活かした造形技術の確立、企業への技術移転まで、着実に進めていただいたように思います。引き続き、実用化に向け研究を継続し、企業のイノベーションに貢献されることを期待します。