滋賀県工業技術総合センター 令和5年度(2023年度)業務報告

1. 重点事業

(1)金属3Dプリンタによる部材の高度化・量産化に向けた開発支援事業

1.事業目的

 「滋賀3Dイノベーション研究会」におけるこれまでの取組みによって得られたDED方式の金属3Dプリンタに関する知見を活かし、同研究会を基盤に製造プロセスの高度化・量産化に向けた研究開発、および、材料の適材適所の使用による部品の高機能化を支援し、研究会活動をとおして、得られた成果の技術普及により企業のものづくり技術力向上を図る。

2.事業内容・成果

金属3D積層造形技術による新製品・新技術を創出するため、産学官の研究会による関連技術の情報提供先行試作を実施した。

(1)滋賀3Dイノベーション研究会による支援

24社の県内企業や県内大学等で構成される「滋賀3Dイノベーション研究会」において、おもにDED方式の金属3Dプリンタによる技術開発支援として、情報提供・先行試作を実施した。

成果
  • 研究会の開催 2回
  • 造形体験会の開催 3回

※詳細は、4.研究開発・産学官連携(5)研究会活動の推進③滋賀3Dイノベーション研究会で紹介
 

(2)AI活用の裾野を広げる技術開発と人材育成事業 

1.事業目的

 製造現場におけるAI活用の裾野を広げるための技術開発と人材育成により、県内中小企業の生産性の向上と製品の高品質化を支援しています。    

2.事業内容・成果

 AI活用の裾野をさらに広げることを目的に、大量生産以外の多様な現場環境に対応可能で中小企業にも導入が容易なAI検査技術の開発を進めるとともに、AI講習会および個別出前相談によるAI活用人材の育成を図ります。

(1)AI活用の裾野を広げるための現場対応型検査技術の開発

  • 多様な現場環境においてもAI活用による画像検査および音響検査を実現可能とするための前処理技術およびAI検査技術の開発
  • 多様な現場環境においても活用が容易で中小企業にも導入が容易なタブレット等身近なデバイスでAI検査が可能な「モバイルAI検査プラットフォーム」の開発

(2)AI人材育成のための講習会および個別出前相談、開発支援環境の提供

  • AI検査の事例や実習を含めた講習会を実施し、 開発した技術の普及、AI人材の育成とAI導入を支援
  • AI学習のためのクラウド型スーパーコンピューターを利用開放

成果

  • AI講習会:13人
名称 生産現場へのAI導入とその課題(参加者:13名)
日程 2023年11月22日(水)
場所 滋賀県工業技術総合センター
講演1 AI時代には知っておくべき知識 - AIの概要
講師 阮 翔氏【株式会社tiwaki 代表取締役】
講演2 製造現場によるAIの活用 ~用途に合わせた最適なAI活用のカタチ~
講師 黄波戸 信治氏【株式会社たけびしソリューション開発部 オリジナル商品課 課長】
  • 県内企業への個別出前相談:2件
     

(3)「近江の地酒」付加価値向上支援事業

酵母分離源、シャクナゲ(甲賀市信楽町)
酵母分離源、シャクナゲ(甲賀市信楽町)
分離源からの集積、培養で酵母の取得
分離源からの集積、培養で酵母の取得

1.事業目的

 県内酒造業界は、令和4年4月に国の地理的表示(GI)保護制度※ に承認されたことから、GI「滋賀」を活用した取り組みを進めています。
 GI「滋賀」の認定は、滋賀県産の米と水を用いて県内での製造などいくつかの基準を満たして生産されたことを独占的に示した販売が可能となります。
 そのため、県奨励品種酒米の吟吹雪等の酒米、麹、水に、県オリジナル酵母を加えたオール滋賀での新製品開発が期待されています。
 そこで、当センターでは、県内醸造所が個性豊かでバラエティ-に富む商品開発が進められるように、酒造組合や各醸造所と協働で新規の醸造用酵母を滋賀の自然環境(花や果実)から取得・開発を進め、各醸造所の新製品開発、GI「滋賀」認定酒として滋賀に特化した地酒を消費者に提供できるようサポートします。

※ 地理的表示(GI)保護制度:農水産物などの商品で、産地名の適切な使用を促進する制度で「正しい産地」であること、「一定の基準」を満たして生産されたことを示すもの。

2.事業内容・成果

 県内の豊富な環境資源から酵母を分離し、清酒醸造に適した酵母を選抜することで県オリジナル醸造用酵母のバリエーションをより豊かにすることを目指します。
 県内に生育するシャクナゲやひまわりといった花々やブドウ等の果実から、約120試料を収集して、アルコールを生産する酵母 88株を採取できました。(下図ご参考) 
 次に、栄養培地を用いて発酵試験を行い、清酒醸造に利用可能と考えられる酵母の選抜を行ったところ、約50株の候補株を取得することができました。
 今後は、これら候補酵母株を用いて実際の酒米でスケールアップ実験しながら、実用酵母を開発していきます。
 

(4)製品ライフサイクルにおけるCO2削減技術の開発支援事業

1.事業目的

 県内製造業による製品ライフサイクル全体を見据えたCO2排出量削減に向けた取組を促進するために、製造から使用、廃棄に至る全プロセスにおける省エネ化や電力平準化、脱CO2部材等に関する研究開発を実施する。

2.事業内容・成果

 製品ライフサイクルの中でCO2削減効果が高く、先導的に取り組む研究開発として以下のテーマを実施した。

①石油由来のプラスチックから天然由来のバイオプラスチックへの転換を進めるための技術開発

 バイオマスプラスチックと石油由来プラスチックの差異(強度、長期耐久性等)を調べてデータを蓄積し、これを情報提供・評価技術移転を行うことによってバイオマスプラスチックの速やかな普及につなげる。
 今年度は、市販されているバイオマス由来のポリエチレンと石油由来のポリエチレンについて、キセノンウェザーメーターによる耐候性促進試験を実施。力学的測定および化学分析の方法を検討し、劣化評価を行った。

(成果)

ポスター発表を行い、実施内容および結果について周知した。

関西脱炭素フォーラム2023

開催日時:2023年11月21日(火)

開催場所:マイドーム大阪

参加人数:310名

第3回「Innovation Ecosystem in Shiga」ビジネスマッチング会

開催日時:2024年2月21日(水)

開催場所:ホテルニューオウミ

参加人数:63名

 

②CO2排出量が少ない金属3Dプリンタによる部品製造に関する研究

 金属部品製造における金属3Dプリンタの活用は、金属粉末を積み上げて製品にするため従来の工法に比べて原材料のロスが生じない。特にバインダージェット方式は、一度に多くの精密部品を造形できることから、量産化によるCO2削減の効果が大きい。そこで、センターと3Dプリンタメーカーが連携して、金属3Dプリンタによる製品の高精度化、量産化につながる技術開発を行い、県内企業とその技術を共有することにより、製造工程におけるCO₂排出削減に貢献する。

 今年度は、バインダージェット方式で造形を行った県内企業提案部品に関して、センター内で行った変形ひずみ評価やX線CT内部観察結果を企業とともに検討し、共通となる課題を共有した。また、後工程である造形後の焼結技術に関して、県内企業である島津産機システムズ(株)の工場見学および現地勉強会を開催し、課題となる焼結技術に関する情報共有を行った。

(成果)

バインダージェット方式の金属3Dプリンタについて講習会を実施した。

第4回 「バインダージェット金属3Dプリンタ活用講習会 造形物の形状評価について」

開催日時:2023年6月20日(火)

開催場所:工業技術総合センター

参加人数:11名

第5回 「バインダージェット金属3Dプリンタ活用講習会 BJT造形における焼結工程」

開催日時:2024年2月14日(水)

開催場所:島津産機株式会社

参加人数:10名

 

③水素エネルギー利活用に向けた耐水素性が強いバルブ等部材の技術開発

 水素インフラ向け部材の劣化に対する耐性強化、高コスト化対策、評価技術の向上等に資するために、センターが保有する成膜技術を基礎とした先導的な技術開発、および中小企業の参入を促す国際標準規格に対応した評価技術の蓄積と普及により、中小企業の水素エネルギー分野のサプライチェーンへの参入を後押しする。

 今年度は、スパッタ法を用いて各種部材表面に炭素系薄膜を成膜することによって高機能化を図った。基材としてPETやPIなどの汎用樹脂材料を使用し、成膜後の機械特性などの諸物性の評価を行った。

(成果)

発表(ポスター)を行い、実施内容および結果について周知した。

産業技術支援フェア in KANSAI 2023

開催日時:2023年10月13日(金)

開催場所:大阪産業創造館

参加人数::370名